陰キャの見栄 マーラー 交響曲6番

マーラーで一番派手で充実した曲です。1番はまあ習作っぽいんですが、2番と3番はドンガラは大きいが、中が伽藍堂なオーケストレーションでまだまだ作曲家としての技術不足です。オーケストレーションが充実してくるのは5番以降になるんですが、その中でも一番派手な曲です。

マーラーから200年ほど前の古典派の時代とは違い、楽器も人員もほぼ現代のオーケストラと同じものとなって、その近代的なオーケストラの機能を最大限に発揮させた曲です。マーラーの曲は、 内気で癇癪持ちの根暗の陰キャが、もう目一杯見えを張って大きく、派手に自己を演出したような曲ばかりですが、この曲は特にその色合いが強い。

ということで、過剰演出のこの曲の音響の渦になにも考えずに身を委ねれば、「自己拡大したいいとこ取りの音楽」の中で至福の時間を味わえます。

私的には、創作の内容的にもこの6番、そして私が一番好きな7番がマーラーの頂点だと思います。9番を高く評価する方もいますが、確かにあれは当時流行りつつ合った無調声にチャレンジした曲ですが、チャレンジの分音楽の構成は却ってモノフォリックになってしまい、マーラーの「オレはあっちもこっちも・・」という自己拡大のポリフォニックな分裂症が味わえずに面白くありません。

そして、そういう曲ですから、また古典派のアンサンブルとは違った「鳴り」という面でのオーケストラの能力が必要になる。

そこで見っけたのがこの動画。ホンマにええオケですなぁ。ため息が出ますわ。アンサンブルの作り方といい、鳴らせどころのタメの作り方といい、オケのメンバーがホンマによう分かっていて自発的に音楽を作り上げている。指揮者の作り上げた時間のマス目の中で、100人の独奏者が音楽を作り上げていく。昔のベームとウィーン/フィルさえも彷彿とさせます。

さすが、現代の最高水準のレベルのオケの実力です。

しかし、これだけアンサンブルが合うというのは、メンバー構成にもあるのかもしれません。他のオケのように国籍バラバラ、皮膚の色もバラバラというオケではない。やはり、生まれ持ったリズムや節回しが共通だというのは大事だと思うんですよ。

最高レベルのオケ、フランクフルト放送交響楽団の見事なアンサンブル、N響に爪の垢でも・・。

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