ヴァイオリンの協奏曲はピアノ協奏曲に比べて少ないです。オーケストラと同じ音色の楽器ですし、音量も小さいわけですから作りにくいんだと思います。
そのヴァイオリン協奏曲で私の好きな作品を残したのは、ベートーベン、ショスタコーヴィッチそれにシベリウスです。他は、ブラームス、ドヴォルザーク、サン・サーンスなんかでしょうかねぇ。
その中でも、ベートーベンのが一番好きです。高揚感と肯定感が優しさや切なさと渾然となった ベートーベンの中期の音楽の代表と思います。伸びやかに歌っていくヴァイオリンの旋律を聴いていると、交響曲第3番の1楽章を彷彿とさせます。交響曲よりもっと繊細で感傷的ではありますが。
この曲は、ヴァイオリニストにとってとっても難しい曲ではないかと思います。ブラームスのように、伴奏がガッチリしていて適当に弾いているだけで様になる曲ではありません。ベートーベンにしたら、構成がガラガラで伴奏が弱く、隙間だらけの音楽です。その上、伴奏が追随的で、バイオリンが音楽を作って引っ張っていかないといけません。テクニックだけでなく、音楽を持ちこたえさせる能力が必要な表現の難しい曲だと思います。
きっと、ベートーベンは伴奏に埋もれるヴァイオリンの処理に困ったんだと思います。ソロ楽器として目立たせるためのベートーベンの結論だったんでしょう。だから、ベートーベンはチェロ協奏曲なんかも書いていません。ピアノを入れれば大丈夫と思ったのか、同じ時期にピアノとヴァイオリンとチェロの三重協奏曲は書いていますが。
この時期は、ベートーベンは、アンサンブルの機能や音楽の運動性を楽しむ古典派から、メロディラインと伴奏という音楽の表現力を楽しむロマン派に移っていった時期でもあります。
この時期、ベートーベンは交響曲、弦楽四重奏曲、ピアノ曲で傑作を量産しました。この時期独特のベートーベンの音楽が持つ伸びやかな音楽を聞いていると、本当に心が元気になります。その代表がヴァイオリン協奏曲です。
youtubeで一番面白いと思った演奏がこれです。起立形式の室内管弦楽団で、ガット弦のピリオド奏法や管では古楽器を使い、楽譜もi-pad。いかにも「今」ですな。 オーストリアの地球の裏側のオーストラリアからチャレンジするんですから、相当な意気込みだと思います。スタイルが新しいだけでなく、ものすごく演奏の質も高い。それに比べ、お芸術の上に胡座をかいてる日本のオケときたら・・・。